Yusuke Muroi

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  • ■2010

    2010年春より私は美術大学のデザイン学科に入学した。ここでは技術などを学ぶ一方で、これまでの試みの追求や発展のために得られることが少なかった。それは入学前から分かっていたことかもしれない。私は趣味と称しながらこれまでの制作を続けていた。




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    『無題(石庭)』

    これまでの作品同様にこの作品もグラフィティの文脈で制作したものである。これは都市の路上で偶然発見した苔むした場所にアスファルトのかけらを配置し、小さな日本庭園を複数の場所でつくる試みだ。もちろん多くの人たちはその庭園に気付かない。
    では美術館の中に設営されたらどうだろうか。たとえ小さくとも人々はそれを作品として認識してしまうはずである。私は場所によって変化する人々の認識の差異について考えていた。しかし、この作品が路上にあることで成立するのであれば、決して美術館には移築できないだろう。つまり、作品が置かれた状況はどこにも移動はできない。作品は状況ありきで成立することもある。




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    『カラーフィールド/雑草を装飾』

    これは2009年より始まった『カラーフィールド』のシリーズの一つと見做された作品である。雑草をビーズで装飾する行為であり、前作『無題(石庭)』で考えていたことを含んでいる。また、誰にも汚されない領域があるならば、それは子供が金魚を弔うような行為にあると私は考え、そのような領域を目指そうとしていた。そして、この頃から私は年齢や性別がなるべく作品から分からなくなるようにも努めていた。私は、かつて話題を呼んだ『ミステリーサークル』のような作者不詳の得体の知れない現象としての作品を求めていたのかもしれない。しかし話題を呼ぶことに関心があったわけではなく、むしろささやかな物体や場所がささやかな力によって変容する風景を一個人として見たかったのである。




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    『タイトル不明』

    とある祠の広場がイチョウの落ち葉で埋め尽くされていた。私は箒で落ち葉を掻き分けドローイングを施した。ある風景に何を以て対応するのか、その判断と即興性はグラフィティの本質の一つであると考える。




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    『タイトル不明』

    ある廃墟に年代物のお茶のボトルが散乱していた。私はそれを無造作に並べる行為をおこなった。私のこの痕跡はのちに廃墟マニアのブログで「アブダクションをおこなった痕跡」として紹介された。常にグラフィティライターは正体不明の何者かにならなければならない。私はそのような地点を目指していた。




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    『無題』

    葉の落ちた低木の先端にスナック菓子を取り付けた。破壊行為としてのグラフィティではなく、私はいつも許される領域と許されない領域の狭間を狙っている。




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    『タイトル不明』

    2009 年に制作した『風景のインターフェース(1)』をヒントに制作した写真作品である。金網フェンスの向こう側に2枚の鏡を配置し、2枚の鏡の間を中心として、金網フェンスの手前から写真を撮る。これによって金網フェンスの手前の風景と向こう側の風景を一つの画面上で接続させる。しかし私の姿は画面上には映らない。





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