Yusuke Muroi

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  • ■2011

    2011年は東日本大震災が起きた年であると同時に、私が美術大学を中退し東京藝術大学の先端芸術表現科に入学した年である。私は、ここを現代芸術の領域に属するための作品を作る場として認識していた。そして、私がここに来た理由は、これまでの試みや考えを無かったことにしないために現代芸術の領域に落とし込みたかったからだ。私は現代芸術に永遠性を感じていたのだろう。しかし、現代芸術は権威と価値を高めることで作品を安全な場所に保管し続けるシステムであることに気づいた。一方、グラフィティは権威や価値を否定し、雨ざらしの場所で刹那的な作品を発表する方法であり、現代芸術の方法論とは反対側にあるように思えた。そして、私は言うまでもなくグラフィティの方に価値を見出していた。それはこれまでの活動に起因する。よって、ここでは双方の板挟みになりながら、これまでの制作を継続するとともに、自身の表現について考えることとなった。




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    『転送風景』

    これは大学の進級展『取手アートパス 2011』で公開した作品である。私はこれまでの作品の性質上、展覧会という場所で作品を発表することに悩んだが、大学の敷地の入口から校舎の入口の中間地点にあるグラウンドの全面を会場として、田舎などでよく見られる『防鳥テープ』を張り巡らせた。幼い頃の心象風景やアカデミックな場への抵抗が制作の発端かもしれないが「震災の年らしい」と評された。




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    『移動』

    移動の痕跡を見せる試み。グラフィティは少ない手数でおこなわなければ追われる立場となる。私はものの移動のみで風景を変えようとした。




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    『カラーフィールド』

    この年はカラーフィールドシリーズが続く。しかしグラフィティとして確立することに執着せず、閑散とした風景との対比、写真での記録が目的として加わる。グラフィティと写真作品の間の子のような試みとなり、自分の試みがグラフィティから離れることに幾分か抵抗感を持ちながらも、無断で風景に介入することには徹していた。




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    『無題(象徴)』

    私はモチーフを用意せず、その場で発見した不法投棄物などを周囲に物が無いような閑散とした場所に移動し、写真で記録した。 これもまたグラフィティの延長としての行為だったが、写真で記録することを目的にしていた点で『カラーフィールド』とは異なる。





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