Yusuke Muroi










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  • ■2018



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    平凡な芸術家(仮)は本物の芸術家たり得るか。(すべてを最初から始めたい)(2018)
    ミクストメディア
    5000×5000×5000(mm)
    『第21回 岡本太郎現代芸術賞展』 川崎市岡本太郎美術館, 神奈川


    自身の個人史に虚構を混ぜ合わせ、架空の芸術家の人生をつくり上げる。出身国や性別・年齢などの作家の属性が作品に説得力を与える場合が多々ある美術のコンテクストにおいて、属性を曖昧にする実践。展示室に集積するものには、それぞれ制作した当時の年齢を示す数字のシールが貼られているが、無意味な数字や偽った年齢を示す数字のシールも貼られている。




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    柔らかい労働のための習作(森林の施設にて)(2018)
    ミクストメディア
    6000×9000×5000(mm)
    東京藝術大学 取手校地 大学美術館, 茨城


    アール・ブリュットの作家、マルティン・ラミレスが鉱山や鉄道建設の現場で働きながら、その労働を題材とした絵画を描いていたことに強い衝撃を受け、私自身も積極的に現場職を選び、生活のために働いている。
    ここでは、私がこれまでに経験した労働の印象に基づき、絵画や立体を制作し、配置した。労働で使用した安全靴や、通勤用の自家用車で使用していた脱臭剤などもインスタレーションの一部となっている。




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    スープ/贅沢な(2018)
    ミクストメディア
    1400×1800×900(mm)
    東京藝術大学 取手校地


    インターネットから集めた巨匠の絵画の画像を高級食材とみなし、それらを出力のうえ、コラージュをした上から一部分を除いて色を塗る。
    それを切り分け、カップに分配されたスープのように造形した。




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    労働あるいは制作のあとかた - あるいは無題(2018)
    ミクストメディア
    1700×4500×4500 (mm)
    『GAPオープンスタジオ』 東京藝術大学上野校地陳列館, 東京


    生活のための日々の現場仕事で使用した手袋やウエスと、表現のために制作で使用した筆やノートを一緒に並べる。表現のために使った時間は、日々を生きるために働いた時間と等価になりうるだろうか。




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    「王国をつくりなさい」(2018)
    ミクストメディア
    サイズ可変
    東京藝術大学 取手校地 大学美術館


    ある日、美術大学の入試と思われる実技試験にて、試験監督から「王国をつくりなさい。」と耳元で囁かれる夢を見た。 私はこの夢のお告げに従って、試験の解答としての王国を制作することにした。アール・ブリュットの作家もしばしば 夢のお告げに従って作品をつくってきた背景から、お告げを制作のための動機とする。 けれども、そのお告げは夢といえども、美術大学からのお告げであることに加えて、意図的に従おうとしていることから、アール・ブリュットと同一視することはできない。

    《夢の内容のテキスト》

     2018年11月23日 夢を見た。
    絵を描く試験会場の席に座っている。どういうわけか試験中にもかかわらず私語の飛び交う空間だ。すると、目の前に座っている妙な挙動の男性が、「青いペンを貸して欲しい。」と私に話しかける。私は水色の蛍光ペンしか持っておらず、「これでは?」と提案すると、「それじゃダメだ。」と断られる。だが、実のところ私は青いペンを持っていた。けれども、貸したくはなかった。それは私が幼少期の頃に使っていた大切なペンだった。私は嘘をついたことに罪悪感を覚え、彼に一応その青いペンを見せた。
     すると彼は、鷲掴みに奪って自身の紙にペンを走らせた。しかし、10センチくらい書いたところでインクがかすれてしまった。私は内心ホッとした。彼は、「書けないのなら...。」と諦めた。私は「どうして青ペンが必要なのか?」と尋ねてみた。すると彼は「黒いペンを忘れた。ここには赤いペンしかない。だから赤の上に青を重ねて、黒色の線で絵を描きたい。」と言った。
     私は妙に納得したが、そのあとで「黒いペンを貸しましょう。」と彼に提案した。すると、「それでは駄目だ!」と叫ぶように答えた。そして、もくもくと赤いペンで画面の右上に小さな自画像らしきものを描き、その模倣を下側、左側にとてつもないスピードで繰り返し描いていくのである。
     一方、描くことが何も決まらない私は、ただその光景を呆然と眺めている。だが、頭の中では、4年前から生計を立てるために始めた労働を題材にして何か描こうと考えていた。けれども、職場で学んだ秩序や経験を、表現として搾取する罪悪感に苛まれ、結局は何も描けないのであった。すると、試験監督のN先生が私の横にやってきた。そして「王国をつくりなさい。」と耳元で囁き、去っていった。





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