Yusuke Muroi

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    ・グラフィティ

    グラフィティといえばスプレー缶を使って壁に描く手法が一般的に知られるが、2000年代中頃より立体造形などを路上に配置するような新たな表現が見られるようになった。私はこのような方法に触発され、2009年よりグラフィティとしての作品制作を始めた。
    その際に、最も重視したのは無断でおこなうことだった。屋外に無断で設置され、自然とともに風化・あるいは撤去されるのがグラフィティである。許可を得たり要請に応じて制作はしない。
    しかしながら、これは合法的な行為ではない。そのため、多くのグラフィティライターは匿名で活動をする。基本的に、美術作品を発表するときは作者名が一緒に明記されるが、グラフィティはそうではない。作品のみがそこに存在し、作者がわからない場合もある。このような在り方に関心をもった私は、性別や年齢などの個人の素性がわからないような作品の残しかたを追求した。




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    ・郊外

    都市部にはグラフィティライターのコミュニティが存在するため、グラフィティが多く生み出されていた。誰かのグラフィティの近くにグラフィティを描いて応答したり、より高い位置に描くことを競ったりすることもある。
    一方、私の生活圏である郊外にグラフィティは少なく、そのようなコミュニティは発見できなかった。私は慣れ親しんだ郊外におけるグラフィティの在り方を模索した。そこで、彩度の高い既製品を用いて閑散とした風景を変容させるような制作を始めたが、これらの作品はほとんど誰からも発見されることはなく、風化していった。そのため、作品の記録を写真に残し、インターネットで発信することとした。グラフィティをアーカイブするウェブサイトは多く存在し、これもまたグラフィティを鑑賞する方法の一つである。




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    ・アウトサイダーアート / アール・ブリュット

    芸術に対してグラフィティは周辺の存在だと思う。グラフィティはヒップホップカルチャーから出現したものであり、芸術がルーツとは言えない。だが、近年はグラフィティが芸術の文脈へと回収されているという見方もある。これは一例に過ぎないものの、芸術とはこのように周辺を搾取し拡張していくシステムと言えないだろうか。また、搾取すると同時に、周辺に価値を与え、美術館などの施設を使って保護をすることでもある。こうして作品が残り続けるように芸術に組み込まれることは作り手にとっては本望かもしれない。しかし、それを決定するのは限られた知識人と権力者であり、選ばれるものとそうでないものが発生するという事実がある。

    アール・ブリュット(生の芸術)は画家 Jean Dubuffet(ジャン・デュビュッフェ)が提唱したジャンルである。美術教育を受けず、表現欲求に基づいてつくられた創作物がそれにあたる。多くの芸術家が作品を発表し、価値づけを求めるのに対し、アール・ブリュットの作家は制作をする行為そのものへ執着をする。私は、美術教育を受け、自ら作品を発表していく中で、彼らの態度とその作品から大きな影響を受けている。私は彼らの表現に近づこうとする一方で、その行為がイミテーションにすぎないというジレンマと向き合いながら制作をする。




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    ・労働

    アール・ブリュットの作家 Martin Ramirez(マルティンラミネス)が鉱山や線路建設の仕事に就き、その労働を題材にした絵画に衝撃を受けた。私は大学卒業後、大道具や冷凍物流倉庫の点検作業員などの現場職に就いた。これまで大学で制作を中心としていた生活から、労働を中心とした生活に変わり、制作に影響を及ぼした。例えば、労働時間外に日記のようにドローイングを描きためたり、労働で知り得た技術やモチーフを使って作品をつくるなどである。しかしながら、制作を目的として労働を搾取している感覚や、アール・ブリュットに近づこうとする自身の作為に罪悪感を覚えた。現在は、制作のために意図的に労働をするという意識は捨て、労働と共にある生活や自身の記憶からコンセプトを得て作品を制作している。




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